令和7年12月7日シンポジウム開催レポート

 

 長野県医師会は在宅医療シンポジウムin信州を「みんなで学ぼう在宅医療」というテーマで開催しました。塩尻総合文化センターを会場に、12月7日(日)午後1時半から約2時間。約200名の参加者にお集まりいただきました。

 司会進行を務める長野県医師会在宅医療推進委員会委員の小谷素子から開会が告げられ、主催者を代表して長野県医師会常務理事の塩ノ﨑文博より、続けて塩筑医師会長の椎名裕之より、挨拶の言葉が述べられました。そして第一部の基調講演開始が告げられ、講師の鶴岡優子氏が登壇いたしました。

第一部 基調講演 
「いのちの停車場」から在宅医療を考える
〜栃木での活動から日本映画まで~

講師: つるかめ診療所 所長 鶴岡 優子 氏

 鶴岡先生は、吉永小百合が初の医師役に挑んだ映画「いのちの停車場」の医療監修を務められ、在宅医療分野での講演も数多くこなされている現役医師です。講演では、同映画の事例を交えながら、在宅医療の本質、ACPの重要性、地域における実践についてお話されました。
 講演のイントロは、在宅医療をテーマにした映画「いのちの停車場」の内容を紹介しながら始まります。この物語では、名女優が医師役として、さまざまな背景を持つ患者さんたちの在宅医療に向き合います。末期の肺がんを患う芸者さん、四肢まひのIT会社社長、胃ろうの妻を支える夫など、患者それぞれの個性的な思いに、医師や看護師たちは真摯に応えようとしていきます。鶴岡先生は、在宅医療の監修だけではなく少しだけ画面に登場。意外なおもしろエピソードを交えながら、軽快な語り口でお話が展開されていきます。
 映画のお話の次は「在宅医療はどんな医療?」という問いかけから始まります。在宅医療は、病気や障害があっても自宅で過ごしたいと望む人の生活を支える医療。「手間と時間」がかかり「登場人物が多い」ため、「連携」が重要で「情報共有」が不可欠です。患者さんを中心に、医師、薬剤師、ケアマネージャー、看護師、理学療法士、家族など多様な職種がチームを組んで在宅医療を支えています。「人生会議(ACP)とは?」という問いかけも、AIや辞書、ネット検索で調べるという方法で、わかりやすく解説。そしてACP(アドバンス・ケア・プランニング)で重要なのは、「もしもの時」だけでなく、「いつか必ず訪れる時」のために、前向きに自分の医療やケアについて信頼できる人や専門職と繰り返し話し合い、共有することであるといいます。
 鶴岡先生は、栃木県下野市で診療所を営み、在宅医療の最前線で活動されています。その実践の中から「気ままな一人暮らしのGさん」というケースを紹介。たとえ一人暮らしでも「本人の明確な希望」「本人の覚悟」「周囲のプロの存在」があれば、自宅での最期は実現可能と述べます。また「点滴はできますか?」「費用はいくらかかりますか?」といった素朴な疑問にも実例をあげて、わかりやすく説明してくれました。さらに多職種連携のための「つるカフェ」など地域における活動の大切さにも言及されました。
 講演の最後に、自身の母親の介護経験についてお話され、「どの道でも間違いない。誰と一緒に歩むか、が重要です」と締めくくりました。

 

第二部 パネルディスカッション
「地域の在宅医療を学ぼう」

パネリスト
 医療法人横山医院 院長       横山 太郎 氏
 桔梗ケ原病院訪問看護ステーション  増谷 直美 氏
 塩尻市役所介護保険課 課長補佐   長崎 早苗 氏
 
■コーディネーター
 長野県医師会在宅医療推進委員会委員長  杉山 敦

 

 

 今回のパネルディスカッションでは、長野県塩筑(えんちく)医師会より推薦されたパネリスト3名を迎え、コーディネーターは長野県医師会在宅医療推進委員会委員長である杉山敦が務めました。
 冒頭、コーディネーターの杉山より、長野県の在宅医療推進の立場から、これまでの在宅医療の考え方や歴史を振り返りながら、現在の高齢化社会に伴う課題などについて大きな視野によるスピーチがありました。
 続けて、長崎氏は塩尻市の行政の立場から、地域の高齢化率の推移や地域包括支援センターの役割・活動内容について、グラフやイラストを交えたスライドショーを見せながら、わかりやすく説明されました。また医療機関や高齢者入所施設も紹介されました。
 次に、山形村で診療所を営む横山医師から、地域の訪問診療の実情をはじめ、みなし訪問看護や看取りについても言及されました。さらに在宅医療のより具体的な3つの事例が紹介されます。一部、患者さんの様子や医師たちの奮闘が映像で流され、現場での実践内容がよりリアルに伝えられました。
 その次に、訪問看護ステーションに勤める増谷氏です。患者さんに対する訪問看護師の多彩な活動が豊富な写真入りスライドで紹介され、3つの事例紹介が続きます。患者さんの想いや意思決定を大事にしながら、「その人らしく」暮らし続け、生きることに寄り添い支援すること。それが訪問看護師のひとつの役割ではないかと増谷氏は言います。
 後半は、来場者への事前アンケートから抽出されたいくつかのご質問に対するQ&Aコーナーが設けられました。在宅医療を始めるきっかけから、支える家族の精神的ケアについてまで、多岐にわたるご質問にパネリストたちは真摯に回答されました。
 また塩筑医師会による「<生前の意思表明>リビングウィル」という印刷物の内容について横山医師から詳しく解説していただきました。
 そして最後に、基調講演の鶴岡先生からシンポジウム全体の感想メッセージをいただきました。
 令和7年の在宅シンポジウムin信州は、おかげさまで盛況のうちに終了いたしました。たくさんの方にご来場いただき、ありがとうございました。

杉山 敦

長崎 早苗 氏

横山 太郎 氏

増谷 直美 氏