長野県医師会は在宅医療シンポジウムin信州を「一人でも、あなたらしく、最期まで」というテーマで開催しました。上田東急REIホテルを会場に、12月17日(日)午後1時半から約2時間。約350名の参加者にお集まりいただきました。

 司会進行のフリーアナウンサー浅井みどりさんから開会が告げられ、主催者を代表して長野県医師会総務理事の森浩二より、続けて上田市医師会長の橋本至永より、挨拶の言葉が述べられました。
 そして第一部の基調講演、講師の杉浦敏之先生をお迎えするにあたり、そのプロフィール紹介を長野県医師会在宅医療推進委員会委員の井益雄が行いました。

第一部 基調講演 
「いざ実践!人生会議
 ~老衰・がん・神経難病でのケーススタディ~」

講師:医療法人社団弘恵会 杉浦医院 理事長 杉浦 敏之 氏

 

 杉浦先生のお話は約1時間。人間は必ずいつかは「死ぬ」存在であるというお話から始まり、現在の日本の医療体制について言及。「可能な限りの医療を施す」ことが、本人の苦痛になったり、あるいは後々に家族の負担になる場合もあるとのこと。普段から元気だった人が突然意識がなくなったらどうするか。ご家族が後悔しないためにはどのような選択をすべきか。杉浦先生は映像によるケーススタディを交えながら、解説を加えていきます。そして後悔しないために大切なことは、日頃から最期の迎え方について、ご家族や医療従事者などと対話を重ねておくこと。つまりACP(人生会議)の重要性を力説します。さらに厚生労働省の統計データを引き合いに出して、一般の方のみならず医療従事者の間でも、実際に人生会議をやってる人が少数派であり、まだまだ意識が低い現状であることを嘆きます。いざ、ご本人が人生会議をしようとしても「縁起でもない」と親戚から言われてしまい、お話できないことが多いとのこと。そこで杉浦先生は、在宅医療現場の「雑談」の中から、ACPを形成していくことをすすめています。
 いくつかのケーススタディが紹介されますが、講演の後半では神経難病の方の事例がドキュメント映像として流されました。そのなかで人工呼吸器を「つける」「つけない」の判断を、状況の変化に応じて柔軟に対応する場面があります。このような「現在進行形」の合意形成こそ理想であり、いつでも方針の変更ができることを全員が認識すべきである、と杉浦先生は強調されました。
 「死」を率直に話し合える状況は「健康的」である、と言います。「死」を率直に考えることは「死」を迎えるまでに、いかによりよく生きるか、を考えることにつながります。日常診療に「死」を話題にする機会を増やすことがACPの第一歩ではないでしょうか、と杉浦先生は講演の末尾を締めくくりました。

第二部 パネルディスカッション
「独居でも在宅医療を可能にするには」

パネリスト
 い内科クリニック院長 井 益雄 氏
 訪問看護ステーションやまなみ 青木 美里 氏
 居宅介護支援センターアザレアン 望月 祐子 氏
 
■コーディネーター
 フリーパーソナリティ 武田 徹 氏

 上田・東信地域において在宅医療の最前線で頑張っている医療従事者3名の方々にお集まりいただきました。今回のパネルディスカッションは、会場で配布した「4人の事例紹介」という資料をもとに議論を深めていくスタイルでした。
 資料冒頭のケーススタディで筋ジストロフィーのTAさんを取材した映像が約2分間ほど正面のスクリーンに映し出されます。それを会場の皆さんに見ていただきながら、ケアマネジャーとして実際に関わった望月氏が解説を加えていきます。TAさんの在宅医療には、パネリストの井先生と青木看護師も関わっており、それぞれの立場からお話していただきました。
 望月ケアマネはTAさんとの関わりが最も長く、TAさんご本人の「家に帰りたい」という思いの実現に向けて、様々な課題があったことをお話していただきました。青木看護師は「覚悟」の大切さを訴えて、TAさん支援チームの結束を強める場面があったそうです。そして、井先生は何かあったとき「いのち」をしっかり支える医療サイドの立場から、細かな病状の説明やケアマネはじめチームの重要性について、お話いただきました。
 パネルディスカッションは、このTAさんのケーススタディを中心に展開されました。一人暮らしで在宅医療が難しい症状であっても、本人の強い在宅への意志と、ケアマネ始め支援チームの結束があれば在宅が実現できる。たくさんの聴講者が真剣な表情で聞き入り、パネリスト3人が伝えたい思いは、皆さんの心にしっかりと届けられたようでした。
 そして配布資料「4人の事例紹介」の残り3人のケースについては、井先生より簡単な解説が行われ、最後に、パネリスト一人ひとりからのメッセージが伝えられ、武田氏からは「本日のシンポジウムを参考にして、ぜひ、ご家族の皆さんと人生会議を開いてください」と締めくくりの言葉が述べられました。
 令和5年の在宅シンポジウムin信州は盛況のうちに終了しました。たくさんの方にご来場いただき、ありがとうございました。