長野県医師会は「ひとりじゃない!皆で支える在宅医療」というテーマで、在宅医療シンポジウムin信州を開催しました。会場は、上諏訪 浜の湯。日時は、11月27日(日)午後1時半から約2時間。当日の模様はYouTubeでリアル配信され、またこちらからその動画全編をご確認いただけます。さらにテレビ信州では特別番組が組まれ、12月10日(土)午後2時半より放送されました。


 開催当日、司会進行のフリーアナウンサー浅井みどりさんから開会が告げられたとき、約250名の来場者で会場はほぼ満席でした。冒頭、長野県医師会常務理事の溝口圭一より、続けて岡谷医師会長の今井智彦より、主催者を代表して挨拶いたしました。そして第一部の基調講演は、講師の木澤義之先生をお迎えするにあたり、そのプロフィール紹介を長野県医師会理事の小松郁俊が行いました。

第一部 基調講演 
「本人の意向に沿った医療・ケアをどうすすめるか
 人生会議を中心に」

講師:筑波大学医学医療系緩和医療学 附属病院緩和支持治療科教授 木澤 義之 氏

 木澤先生のお話は約1時間。厚生労働省によるガイドライン取り決めの背景や、海外での事前指示書の動向など、終末期の医療に関する大きな時代の流れから始まり、アドバンス・ケア・プランニング(ACP)の重要性についての内容に進みます。ACP=人生会議は、生命維持治療や療養場所の話に限らず、それよりも本人にとって大切なことがあるなら、それを優先することを考えなければと、いくつもの実例を紹介します。例えば、ある女性の患者さんは入れ歯だけは最後まで入れておいて欲しい、と。医療現場でのそういう一人ひとりの思いや体験談を木澤先生は紹介され、その丁寧でわかりやすい内容に、うなずく来場者の姿が多く見られました。

 講演の後半は、具体的なACPの進め方についてのお話でした。本人や家族、医療者の立場から、どのような心構えで進めたらいいのか。本人の意思・気持ちをくみとる人生会議を重ね、それが質の高いケアにつながる重要な手段であると総括されました。

 今回の講演では、スライドショーのプリント資料を事前に配布しており、来場者はお話に耳を傾けながら、随時、手元の資料を確認していました。ACP(人生会議)についての理解がより深まり、充実した講演会となりました。

 

第二部 パネルディスカッション
「住み慣れた街で、最後まで暮らすには」

パネリスト
 ライフドアすわ所長 宮坂 圭一 氏
 諏訪中央病院副院長 髙木 宏明 氏
 yui 訪問看護ステーション管理者 高橋 光子 氏
 富士見高原病院医療ソーシャルワーカー 矢﨑 志津 氏
■コーディネーター
 フリーパーソナリティ 武田 徹 氏

 地域包括ケアに取組んでいる諏訪地域の医療従事者たちによるパネルディスカッションです。進行役は在宅医療を受ける側の立場から、武田氏が務めました。

 まずは諏訪地域の在宅医療について、開業医の立場から宮坂氏、病院の立場から髙木氏がそれぞれお話されました。次に、在宅医療の多職種連携について、訪問看護の立場から高橋氏、ソーシャルワーカーの立場から矢崎氏のお話が続きます。さらに諏訪市の地域包括ケアシステムとして成果を上げている「ライフドアすわ」の様々な取組みについて、その所長でもある宮坂氏から紹介いただきました。

 後半は、人生会議について、ディスカッションが進行します。まず、自宅で最期を迎えたいと思っている方が在宅医療・ケアを受けるまでのプロセスでは、いっしょに考え悩み、答えを出していく協働意思決定が大切であると髙木氏が口火をきります。次に、富士見高原病院における人生会議への取組みについて、矢崎氏から紹介いただきました。宮坂氏からは、88歳の進行がんの患者さん本人の希望にそって、歌舞伎座、善光寺、知恩院へ家族とともに旅行した事例が紹介され、本人にやりたいことがあれば、「かなえてあげるのが私たちの役割」と締めくくります。高橋氏は、訪問看護の現場を紹介するとともに、自宅で何もせず最期を迎えることを希望した患者さんのエピソードをお話されました。大好きな赤ワインを「血だかワインだか分からねえわ」と笑いながら飲み、亡くなる少し前に「今が一番しあわせ」と書いたメモを渡してくれたそうです。髙木氏からは、ある患者さんの胃がん告知にまつわるご夫婦間の心暖まるエピソードを紹介していただきながら、ご家族はじめ医療関係者との対話の重要性を語っていただきました。

 最後に、パネリスト一人ひとりからのメッセージが伝えられ、武田氏からは「本日のシンポジウムを参考にして、ぜひ、皆さん、うちに帰ったら、ご家族の皆さんと人生会議を開いてください」と締めくくりの言葉が述べられました。

 閉会の挨拶は、諏訪郡医師会の細田源浩より行われ、令和4年の在宅シンポジウムin信州は盛況のうちに終了しました。たくさんの方にご来場いただき、ありがとうございました。